2025年10月10日金曜日

PharaohからRiceへ

■カリフォルニア生まれのスイムベイト
リッジテール(vortex tail)ルーツは、カリフォルニア州の虹鱒放流プロジェクトに遡ります。放流直後の養殖トラウトが見せる“弱々しくも突然違う水に入れられとまどう生命感のある泳ぎ”を再現するために生まれたのが、アメリカ西海岸のスイムベイト文化。リアルな造形とスローでも動くロールのないナチュラルなキックアクションを追求するカルチャー。





■ハドルストンという「壁」
正直に言うと、自分はもともとリッジテールタイプのスイムベイトに手を出す気はまったくありませんでした。なぜなら、そこにはスイムベイトの王様、ハドルトラウトが存在していたからです。圧倒的な釣果、完成されすぎた存在。中途半端に触れたところで勝てるわけがない。だからこそ、ずっと避けてきた。
琵琶湖では、当時ハドルストンが輸入された時以降リッジテールタイプのスイムベイトがブームというほどになることはほとんどありませんでした。ウィードレイクという環境もあり、ウィードレス性を重視したシャッドテールタイプが勢力を拡大。かたや池原では爆発的釣果、菊本さんが出していた当時の映像はほんと衝撃でした。現在、日本でリッジテール系スイムベイトといえば、9inch以下のサイト寄りが主流。「ジャークで飛ぶ」「ボトムに置ける」「超スローでも動く」いわばトーナメント的コンセプトが中心で、アメリカの流れとはまた違う、日本独自の進化を遂げてるように思う。

■DRT of DNAで見た“本場”
カリフォルニアでの撮影取材中、DRT USAのラファエルと一緒に釣りをしたときのこと。
彼が使っていたのはNate’s Baits Line Through Trout 12inch


ただ表層を一定に巻くだけ。あの時の衝撃は忘れられません。
遠投して、ただ巻くだけで世界が変わった。
でもその時点では、まだ「リッジテールには手を出さない」と心に決めていました。
“リッジテールを超える何か”を作りたい、その思いがPharaohのスタートでした。

■布ベイト"Pharaoh" 誕生
ファラオは内部コアがあるDEPSさんのサイレントキラー、マニホールドさんのデニイロ・パチイノのような構造、外側の布が水を受け流しながらゆらめく。魚の反応は凄まじく、何十回もバイトを得ました。巨大魚との遭遇も多く、まさに“夢のルアー”になりかけた。
しかし、獲れたのは、たった2本。。。





■見えた課題
フッキング率が極端に低い。理由は明確でした。
歯に布が触れたら絡んでしまい、フックポイントに届く前に「掛からない」
視覚効果としては最高で、魚はよくチェイスする。
ただし、その反応は「迷いながらのパク」。
つまり、水押しが弱すぎる。水を動かさない、いわゆる低波動。
10inchくらいのサイズでも、まるで水中を漂う雑巾のような存在感。
“喰わせる”ではなく、“見せる”ルアーになってしまっていた。
布の種類、厚み、硬さ、リップ装着など、考えうる手はすべて試しました。
でも、やればやるほど迷宮入り。

最終的に「迷いなく喰わせるルアー」を目指したいという想いだけが残りました。
それでも「布」は多くを教えてくれた
この2年間でPharaohから学んだことは多い。
魚の視覚、アクションの質、水押しの関係、そして“迷いなく喰わせられるルアー”とは何か。
構造としても完成度が高く、商品として出せば面白いとは思います。
実際、アクションに関してはKlashユーザーが納得するレベルまできており、
他魚種のテスターは自己記録を更新。

@ryotangler

ただ、それでも僕の中では“惜しい”に留まりました。
最終プロトの時点で、操作性もレンジコントロール性能も完璧。
これはまた何か新たなヒントが見つかれば触りたいと思ってます。なんせ謎が多すぎる。

■そしてRiCEへ
布の限界を感じつつ、新たなビッグベイトの可能性としてビビッと来てたのが
エラストマー素材でした。

極薄のエラストマー素材のような服(pharaohの皮)ができれば???いろんな妄想をしましたが色々な障害が立ちはだかり断念。それって結局サイキラやん...みたいな。これはほんと悩んだ。悩んだ結果振り出しに戻りダメ元でリッジテール系のスイムベイトの設計を始めました。経験も少なくリッジテール系への自信もないままスタート。やる前からすでに構想としてあったのはエラストマー素材でした。PVC素材とは違う"比重"と"弾性"と"耐久性"これらを活かすことができれば世の中に無いもの、違うモノが作れるんじゃ無いか?色々しらべたけどエラストマー素材のスイムベイトはまだ世の中に非常に少なくあったとしてもPVCのような柔軟さを求めたようなモノが多く自分が目指すモノと方向性が全く違う。この素材で自分が目指す方向性で形になれば世のスイムベイトと差別化できるんじゃないか?そんな事を思い開発はスタートしました。

■高弾性素材との出会い
叩き台が完成。最初の印象は、硬い!でした。硬すぎこれは使いもんにならんな...と。
業者さんには仮の金型やら材料やらとせっかくやってもらったけど第一印象はダメでした。
しばらく放置し、武器のなくなった兵士のようにポカーンとしていた。そして今年の春先、3月にケイキが出したRiceでの釣果や弊社が扱う海外からの輸入品スイムベイト、海外勢の琵琶湖釣行での結果を見て????これはもしやと思い自分流の使い方でRiCEのプロトを使用したところ、一発で釣果として跳ね返ってきた。

PVCにくらべたら超高弾性、動き出しも悪く他のスイムベイトのようなスロー巻きするとi字になるような感じでした。通常のスイムベイトよりも早くリーリングしないとテールを振らないけど一度振り出したら頭までしっかりシェイクしてタイトにハイピッチで動く。他のスイムベイトとは一線を画すアクション"自走している感"この特徴に気がついてからこれしかないわ....となりました。例えばRiCE使用時と同じスピード感でPVC系のスイムベイトを巻くと柔らかさ故に素材が伸びた状態(破綻しかかる)で水を受け流しているだけの状態であまりよい感じとは言えなかった。巻きのスイートスポットが全く違う。布の"無"を経験したからこそエラストマースイムベイトにたどり着いた。pharaohの経験は全然無駄じゃ無かった。

RiCEのサブネームは

"Speed Wobble Shiner"


オイカワ、ケタバス〜ウグイのようなベイトフィッシュに寄せたスイムベイト。

まだまだ開発途中ですが記事として残していきたいと思います。続く